北九州市立大学国際環境工学部燃料電池研究室

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研究内容

@ 燃料電池発電性能の非接触診断法の開発

【研究の背景と目的】

固体高分子形燃料電池(PEFC)は自動車や家庭用コジェネレーションの原動機として期待されていますが、更なる発電性能の向上、長寿命化およびコスト低減などの課題があります。なかでも、PEFCの発電性能・寿命の向上にとって、燃料電池内部の物質移動、その物質移動と密接に関連する電流分布を明らかにすることは重要な課題です。 本研究は、非接触でPEFC電極面内の電流分布を計測する技術を確立することを目的にしています。

【計測方法】

1.発電時に燃料電池内部を流れる電流により誘起される電池周囲の磁場を測定します。
2.この磁場から、磁場と電流との相関関係より、燃料電池内部の電流分布を求めます。

【本計測方法の利点】

・非接触測定が可能です。
・燃料電池の発電状態を乱しません。
・燃料電池の構造を大きく変えずに測定できます。

【共同研究者】

大分大学 工学部 機械エネルギーシステム工学科 後藤 雄治
東京大学 大学院 システム情報学専攻 奈良 高明

【支援】

2021年度はJKAのオートレースの補助(2021M−195)を受けて実施しました。

JKA

A 燃料電池の燃料極内の水素濃度計測法の研究

【研究の背景と目的】

本研究室では、これまでの研究で燃料電池に負荷サイクルを繰り返し課すと、その性能が徐々に低下する現象を観察しました。この性能低下が反応領域への水素ガスの供給律速による可能性が高まったため、反応領域近傍の水素濃度計測法を提案し実験的検討を進めています。

【計測方法】
 
本研究では、燃料極支持型SOFCの燃料極内の電解質近傍にセンサを埋設し、このセンサと空気側の電解質表面の間の起電力を測定し、ネルンストの式を適用してセンサ近傍の酸素分圧を求め,その酸素分圧から水素濃度を計測しようとしています。

【研究成果】
 
現在、水素供給量や作動温度を変化させた時の酸素分圧の変化の傾向が数値シミュレーションで得られた傾向と類似している結果を得ています。

【支援】

本研究はJSPS科研費26420154の支援を受けて進めています。

B マイクロ光造形タイプの3Dプリンターによる電極の作製

【研究の背景と目的】

高温(800℃以上)で動作する固体酸化物形燃料電池(SOFC)は最も高い発電効率を特徴としており、業務用燃料電池システムや家庭用燃料電池に適用され始めています。しかし普及拡大のためには、性能・寿命の更なる向上、生産工程の効率化・高度化が求められています。SOFCの電極微構造はその性能・寿命に大きく影響するため、最適な微構造(細孔の割合・寸法など)を最適な位置に配置できる製造技術が必要です。電極には電池反応、ガス・電子の移動、機械強度等の機能が要求され、各々の機能を最大にする最適な微構造が異なります。SOFC性能を飛躍的に向上させるためには、このような異なる微構造を電極の最適な位置に選択的に配置することが必要ですが、従来技術の改良では限界があります。本研究室では上記課題を新たに提案する3Dプリンティング技術により解決するものです。

【電極作製方法】
 
電極粉末と紫外線吸収タイプの光硬化樹脂との混合スラリーを満たしたプール(底にはガラスを張り光の透過を可能にしています)に、ステージに固定した基板表面を浸け、下側からUV-LED光(波長約365nm)をピンホール板を通して照射します。この照射位置をxyステージ(分解能2μm)により基板面方向に走査して、電極粉末を含む光硬化樹脂を硬化させていきます。UV-LED光が照射されず光硬化樹脂が硬化しなかった部分は洗い落とされて細孔となります。zステージにより基板を垂直方向(分解能1μm)に引き上げながら厚さ方向に造形し、立体造形を実現します。硬化した部分は電極粉末を含み、この後の焼成工程により樹脂は焼失し残った電極粉末同士が焼結して電極となります。

【研究成果】
 
多孔質体を造形するための新たな手法として、LED光源とピンホール板とを組み合わせたマイクロ光造形タイプの3Dプリンターを提案し、最大造形寸法40mm×40mm×1mmn、位置決め精度10μm以下が可能な装置を設計し作製しました。NiO/Y2O3安定化ZrO2の電極粉末と光硬化樹脂の混合スラリーを用いて立体造形およびその焼成実験を実施しました。平均直径390μm、平均高さ44μmの円柱状の造形物を500μm間隔で最大5層まで積層できました。また、層ごとの造形物間の平均隙間53μmを達成でき、目標とする100μm以下の細孔を形成することができました。焼成後の構造的な崩壊はみられませんでしたが細かな亀裂が発生し、この点は今後の課題です。本年度の後半において、試作3Dプリンターの改造を行い、ピンホール板の孔径および配置に対して3%の寸法精度で造形することに成功し、大幅な寸法精度改善を達成しました。

【支援】

本研究は公益財団法人 北九州産業学術推進機構の新成長戦略推進研究開発事業(シーズ創出・実用性検証事業補助金)の支援により実施しました。

3Dプリンター
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