土壌汚染分野
 2003年の土壌汚染対策法の施行を契機として,土壌汚染に係る土地問題が顕在化しています.汚染原因は,過去の工場排水や廃棄物等の埋立など,いわゆる過去の負の遺産といわれるものが多いのが特徴です.土壌調査の契機は,土地の取引・改変,ISO関連などですが,案件は民間が中心であり,土地取引の多い首都圏・近畿圏などで市場が拡大しています.この問題は土地資産の減額や企業イメージ低下,不動産取引への影響のなどのリスクを伴うこともあり,適切な対応や低コスト処理方法の確立が望まれています.これまで,掘削除去以外で土壌洗浄,微生物処理,地下水制御による拡散防止工法などの開発を行ってきました.今後は,土地価格の低い地方にも目を向け,土地が適切に有効活用できるような有用な対策手法の開発を目指します.
 一方、2011.3.11の福島原発事故によって大量の放射性物質が拡散し、広範囲の土壌・廃棄物・焼却灰・汚泥等が汚染され、大きな問題となっています。偶然にも過去に放射性廃棄物の地層処分に関する研究に長く従事していたこともありそのノウハウを生かして放射性汚染物質を迅速に、確実に、安全に、隔離・保管する技術として「多機能盛土」を提案し、実用的な研究を行っています。
 さらに、中国(China)での汚染土壌対策が注目されるようになり、JETROや現地法人を通じた支援活動を足掛かりとして、日中の分析方法の比較評価や超高濃度重金属汚染土壌に対応した不溶化剤の開発や新しい封じ込め技術に関する研究を行っています。
 超高濃度重金属汚染土壌の措置技術
 多機能盛土による放射性物質汚染土壌・廃棄物等の保管・隔離技術
 多機能盛土構造による自然由来汚染土壌の処理技術

 降雨浸透抑制効果による汚染物質溶出特性に関する基礎研究
 
 読売新聞掲載(2012年2月23日 夕刊 左:福岡・北九州,右:関東)
地圏環境分野
 昨今,人間活動に伴う二酸化炭素の増大による地球温暖化への影響が懸念されており、化石燃料の抑制の観点から,新年エネルギーの開発,電気自動車の開発,生産プロセスの効率化,超効率ヒートポンプの開発などが行われています.一方、二酸化炭素を削減する技術として,地中CO2貯蔵(CCSと呼ばれています)技術の開発プロジェクトも進んでいます.そういった背景にあっても,本来地球上でもっとも二酸化炭素を排出している自然要因(地中の小動物・微生物分解など)や土地利用の変更に伴う影響などについてはよくわかっていません.また,地中にCO2を貯蔵するCCSにおいても地盤中でのCO2漏えいモニタリング技術が確立されているとはいえません.こういった課題を克服するため、第一段階として地中でのCO2の測定をリアルタイムで行える技術の開発に挑戦しています. 新しいシステムが完成すれば,自然由来のCO2発生のメカニズムも徐々に解明されてくるでしょう.
一方、こうした技術を生かして斜面崩壊の要因となる地下水位の上昇を不飽和帯のCO2濃度の変化を測定することで予測する研究を行っています。
 地中ガス測定による地すべり予測 
 土木学会第71回年次学術講演会より(2016年9月)
太陽熱利用分野
  自然エネルギー・再生可能エネルギーとして太陽光発電が急速に成長しているが、不安定性、コスト負担(電気料金や補助金)、将来の大量の廃棄物処理などの課題が徐々に顕在化してきており、過度な投資は難しくなってきていると感じる。一方、太陽熱の利用は、太陽光の成長に逆行して大きく縮小しているものの、利用の方法を工夫することで今後大きく成長できると考えている。
 当研究室では、太陽熱(空気)を利用した蓄熱システムを開発中であり、住宅や農業用ビニールハウスなどへの活用を想定した研究を進めている。また、上水汚泥などのリサイクルを目的として、そのプレ乾燥支援に利用するための基礎研究を行っています。
 太陽熱蓄熱システムによる住宅および農業用ビニールハウスの空調支援技術
太陽熱+ドレーン材による汚泥のプレ乾燥支援技術
 
 太陽熱利用による汚泥乾燥実験状況(2017年8月)